初恋は水中の彼


「杏奈、来週から気をつけて帰れよ、送ってやれないから」

「うん、よかったね選ばれて」

「今度の大会は大事だからな、杏奈も大会には出るんだから頑張れよ、諦めるなよ」

「だね」

杏奈はニッコリ笑った

今日、玲花ちゃんと実は一緒に泳いだんだよね
五秒も差があった、全然敵わない、弱気な発言は譲にも影響する、譲にはもっと上を目指して欲しいし




譲は講義を受けていた、一つ前の席に律子がいた
後ろからツンツンとつつく
律子は後ろ向いた
先生が黒板に向かっている間に譲は律子の隣に移動した
二人は小声で話す

「お前もこの講義とってたのか」

「今日遅くなっちゃって、いつも前の席にいくんだけど」

講義が終わる

「最近、杏奈は元気が少しないようなんだけど、君達はうまくいってるのかな?」

「一緒には帰ってるよ、遊びには行けないけど」

「えっ、練習終わってからいけば?行けるよね、もしかして直帰ですか?」

「直帰だよ、母親が遅くなると心配する」

「でも飲み会とかは出てるじゃん」

「二次会は行かないだろ?まあ言えば大丈夫だと思うんだよ、俺も昔から知ってるし、だけど杏奈が言わないから俺も無理にはと思って……その先がない」

「あー、飲み会の後、ホテルに行けないってことね、本当にまだあれからもお子様なんだね(笑)」

「杏奈がその気にならないのに無理にはと思って」

「よく、我慢してるねー(笑)」

「してるよ、それより元気がないのは玲花を意識してるんじゃないかな」

「この間二人でタイム計ったのよ、五秒差だった、それに二人はあまり話さないね、杏奈はホンワカした性格だから他の一年は優しい先輩って慕ってくれてるんだけど玲花は話しかけないね、柴田くんのこと好きだからだと思うよ、空気がピリピリしてる」

「あいつからの告白は高校の時に断ってるし杏奈にもいってある」

「玲花のほうがそうじゃないからでしょ、杏奈みたいにぼーっとした子なら奪えるって思ってるんじゃない?」

「俺、どうすればいいんだよ」

「やっぱ、愛されてる感が必要なんじゃない?」

「けしかけるなよ、大会前なのに」

「でも大会を乗り切るために必要なんじゃない?単純な杏奈には、もっと玲花にもラブラブを見せつけてあげないと、頑張って~」

律子は言いたいことだけ言って教室を出ていった

「う~」

譲は机の上に頭を置き悩んでいた
どうすればいいんだよー
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