初恋は水中の彼
「この前言ってたように今日から九名の強化練習に伴い各種目別もメニューの変更を行う、四年生、各リーダー中心となって練習してくれ」
「はい」
部活が終わり女子ロッカー室
疲れた、強化部員も大変だけどそれ以外もメニューがハードになってる、早く体慣らさないと、譲達はまだこれから練習だし、一緒に帰れないのか~
「杏奈、一人で大丈夫?」
「あっ、律ちゃんお疲れ様、大丈夫」
次の日部室にいくと強化で残ってる先輩がいた
「杏奈、昨日譲くん足つったのよ、聞いてる?」
「えっ、聞いてないです、ひどそうでしたか?」
「歩いてはいたよ、玲花と帰ってたけど、心配させたくないから黙ってるんだったら聞かないほうがいいかも知れないけど」
「ありがとうございます、教えていただいて」
大丈夫かな、強化の方を見た、譲は普通に泳いでいた
たいしたことなかったのかな
夜、譲に電話した
もう、帰ってるかなー
「もしもし、どした?」
「あっ、もう帰った?今大丈夫?」
「いや、まだ、帰って……」
「譲先輩、駄目ですよ、電話切って、早くー」
「あっ、おい」
ブツッ、電話が切れた
今の玲花ちゃんの声……
杏奈は涙が止まらなかった
それからも譲からは折り返し電話はなかった
次の日の朝、泣きはらして寝不足の杏奈は目が腫れていた
学校行きたくない、でも今日一限、出席とる先生だから出なくちゃ
顔を洗いマスクをして、だてメガネをかけて大学に行く
「おはよー杏奈、どうした風邪?」
「何でもない寝不足、ごめん、ひどい顔で……」
「杏奈~」
譲が走ってくる
「昨日、悪い連絡出来なくて、携帯が……」
「先輩、おはようございます」
玲花がやって来た
「はい、譲先輩、昨日家に携帯忘れてたでしょ」
携帯を譲に渡す
「困ってると思って持ってきてあげたんですよ」
「あ、ありがとう」
杏奈は走って校舎の方へ向かう
「あっ、おい、待てよ」
「私、同じ講義だから私が行くよ」
律子が追いかけてくれた
「もう!なんでこんな時にくるんだよ、空気読めよな」
「えーでも困ると思って、玲花授業午後だけだったけど持ってきてあげたんですよー」
「悪かったよ、じゃあ授業あるから」
「はーい、じゃあ、部活で」
譲も校舎に歩いていく
杏奈は声を殺して泣いていた
ティッシュを手に風邪をひいたかのように鼻をすすっていた
講義が終わると外のベンチに座る
律子は背中をさすっていた
「ご、ごめん、律ちゃん」
「いいよ、気のすむまで泣きなさい」
「あ、あたし、譲の大事な時に困らせて……彼女失格だ……」
「そんなことないよ」
「延長練習で譲が足つったって先輩に聞いて、電話したら玲花ちゃんといて……それだけで動揺しちゃって、それに……家って……」
また涙が止まらなくなった
「柴田くんを信じてあげないといけないと私は思うよ、玲花が柴田くんを好きなのはわかるけどちゃんと断ってるんでしょ?この間柴田くんと講義が一緒で少し話したけど、杏奈のこと大事に思ってたよ、大事すぎて手を出せないでいるんだよ、柴田くんに同情するな」