初恋は水中の彼
「何で?、大事なら玲花ちゃんと帰らなくても……」
「玲花の挑発にのっちゃ駄目だよ、杏奈は先輩なんだからしっかりしなくちゃ、譲は渡さない!くらいは言わないと」
「駄目だよ律ちゃん、後輩いじめたら」
はぁ、杏奈はもうー
「こんな泣き虫、自分が嫌い」
譲がやって来た
「後は二人で話すんだよ、後でね」
「律ちゃん?」
杏奈は顔を上げた
譲が目の前に立っていた、ベンチに座る
「逃げるなよ……傷つくだろー、ちゃんと話させてくれよな」
「ご、ごめん、どうしても涙が止まらなくて……こんな泣き虫嫌だよね……大事な時にあたしの事考えさせてごめんなさい、大丈夫、一人になったら落ち着く……め、迷惑かけて、本当にごめんなさい」
「迷惑なんて思ってないし、ちゃんと説明するから泣きながらでいいから聞いて」
杏奈は頷いた
「延長練習の時に足をつった、そして玲花と帰った……それは玲花の父親が整体師で家で開業してるんだよ、高校の時から疲れが出たら通ってる
足やった日は予約入れてなくて待ったから帰るの遅くて連絡できなかった、次の日は予約入れて帰ったから寄ってたら杏奈から電話かかって話してたら玲花に呼ばれて、電話を切られてそのまま電話を置いてきちまった、で朝に至る、わかってくれたかな?」
杏奈はコクコクと頷いた
譲は優しく肩を抱いて抱きしめてくれた
構内だということをすっかり忘れ
「玲花は負けず嫌いだから杏奈にちょっかい出すかも知れないけど、お父さんにはお世話になってるしなかなか言っても聞かないんだよ、でも俺の彼女は杏奈だから、俺のこと信じて」
「はい」
「泣き止んだ?」
「見ないで、目腫れてるからゴーグルつけたい」
「まだ部活には早いよ(笑)杏奈、授業は?」
「今日は一限だけだった」
「じゃあ早いけど学食で飯食ってどっかいくか?」
「うん、律ちゃんにメール入れとく、心配かけたから」
二人は学食へ歩いていって早い昼食をとる
「帰ってくる時間考えても四時間くらいかー、どっか行きたいとこある?」
「ううん、譲と一緒ならどこでもいい」
「どこでもって……」
譲は考える
「じゃあ、そろそろ俺の行きたいとこ行かせて貰おうかな」
「うん」
二人は大学を出て暫く歩く
電車に乗り一駅で降りる
「道覚えておいて」
「あっ、うん」
マンションの前に立つ
「ここ、俺んち」
「マンションなんだ、綺麗だね、うちの古い家とは大違い」
「入るよ」
「えっと手土産がいるよね、それにこんな目腫れてる時にご挨拶なんて」
「今は仕事いってるから誰もいないから気をつかわなくて大丈夫」
五階でエレベーターを降りる
「どうぞ」
「お邪魔します」