はちみつの景色
「男子やってる!」
「花山、あれはモテるわ」
となりのコートからは歓声が鳴り止まない。みんなの視線の先には花山くんがいた。
180センチくらいある身長と華麗な身のこなしはバスケ部だっけ?と勘違いさせた。
花山くんも中学まではバスケ部だったらしい。あくまでも噂で聞いだだけ。
「花山もバスケ続けたらよかったのにねー」
「やっぱりあの動きは元バスケ部?」
「そうそう。キャーキャー言われんの疲れたのかな?引退してから体育館に顔すら出さなかったよ」
夏子は花山くんと同じ中学だったから、結構情報が豊富。
「へー。…え、あっ!」
「か、果乃!」
花山くんを目で追いながら歩いていたが、ガシャン!と自分でも驚くほどの音を立てて、私はひっくり返った。
「いた‥痛すぎる…」
「大丈夫⁈」
周りにいた人が集まってきて、更に恥ずかしい。
となりのコートの歓声すら、鳴り止んでこちらを見ていた。もう、恥ずかしくて顔あげられない。
うちのクラスの荷物を避けながら歩いていた時、荷物で見えないコードに引っかかるという、最悪のこけ方をしてしまった。
「わ、私ちょっと保健室」
「大丈夫?行ける?」
「いけるいける!」
痛い足を引きずりながら、恥ずかしさを隠すようにスピードを上げて保健室に飛び込んだ。
「先生〜は、いないか」
さっき球技大会見てたもんなあ…球技で怪我したわけじゃないし、見てもらうのが恥ずかしいし、丁度良かった。
「ええ。痛い…」
思ったよりも足擦りむいてるし…ついてないよ、本当に。ひとり嘆いてもだいぶ虚しいだけだった。