はちみつの景色



消毒をしていると、保健室に向かう足音が聞こえてきた。



「…今先生いませんよ」
「中川さん」
「花山くん…?」

花山くんだ…。近くにいたのに遠くに感じた花山くんは今、目の前にいる。

「花山くん、どこか痛いの?」
「ううん、ちょっと休憩。」
「保健室は休憩所じゃないよ、花山くん」


キャーキャー言われて疲れたのかな?



「違うよ、中川さんが休憩所」

そう言うと、花山くんは私の隣に腰を下ろした。

「えっと…「果乃って呼んでいい?」

「え?」

覗き込むように私の顔を見る花山くん。

ちょっと待って近い!

綺麗な髪の毛にくっきりとした二重。ほのかに香る柑橘の匂いに一瞬クラっときた。

「は、花山くん!近いよ‥」
「千景だよ」

肩あたりを押し返すもまったく動きはしなかった。

「千景って呼んでほしい」
「ち、千景‥くん」

わわわわわ…なんで名前で呼ばされてんの私!友達ってこんな近いの…


「果乃ってずっと呼びたかったから嬉しい」

友達の定義がわからないよ

「ち、千景くん、わたし心臓が持たない」「俺も緊張してる」
「うそ…」

ほんとほんと、と笑い返す。絶対嘘!



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