はちみつの景色

「花山、いや、千景くん。バスケ部だったの?」
「そうだよ。中学まではね」

「すごく上手だったから。私も中学まではバスケ部だったの」
「…知ってるよ」

「え?どこか試合で会ったことある?」
「あるかもしれないし、ないかもしれない」

「確かに、会っててもおかしくないし、会ってても気づいてないのかも!あ、でも千景くんに会ってたら記憶に残ってる気がする、一回見たら忘れなさそうだし!」

あ…私、何を言ってるんだ…

これじゃあいつも千景くんを見てるみたい。

「ふふっ、果乃っておもしろい。…これからの俺を見てくれたらいいよ」
「へ?」
「もう試合始まってるかな~」
「あ!試合!千景くん!行かないと!」
「そうだね」

サッと立ち上がる千景くん。空いた隣の席が少しさみしく感じる。

出口に向かう千景くんの後ろ姿ですら眺めてしまう。いかんいかん。そう自分に言い聞かせている私がいて、この時点で千景くんに魅せられていることは明らかだった。


「果乃、試合。俺を見といてね」

そう言うと保健室を出て行った。

千景くんはたぶん友達との距離感をはかり間違えてる。

なのに、なんでこんなにドキドキするの?

球技大会は大盛況のうちに終了した。もちろん優勝は体育科が持っていったけど、うちのクラスは準優勝。

みんな、千景くんのおかげじゃないかと思うほど、あの後の試合は大活躍だった。
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