はちみつの景色
中庭まで移動した私たち。矢野くんはしっかりとした目で私を見ていた。
「突然ごめんな」
「大丈夫」
「俺、体育科の矢野春希です。中川さんのことずっと気になってて。
急に付き合ってなんて無理なのはわかってる。だから、友達から始めて俺でいいってなったら付き合ってほしい」
背が高くて、短髪で爽やか。誠実そうな雰囲気がすごく伝わってくる。
「って急に言われても困るよなー、ごめんなー」
手を顔に当てて、急に恥ずかしそうにする姿すら好感が持てる。
「い、いや困ってはないよ!ありがとう、告白というか、その、そう言うの初めてだから、なんて返していいかわからなくて。
友達からでよければ…お願いします」
「嬉しい!ありがとう!また、声かけるから!」
何度も頭を下げて、矢野くんは去っていった。
すごく良い人なんだろう。ここに呼び出すのだって緊張するはずなのに、わたしを気にかけてくれた。その姿を見て、誰かわからないからって断るのもなんか違う気がした。