はちみつの景色


中庭まで移動した私たち。矢野くんはしっかりとした目で私を見ていた。

「突然ごめんな」
「大丈夫」

「俺、体育科の矢野春希です。中川さんのことずっと気になってて。

急に付き合ってなんて無理なのはわかってる。だから、友達から始めて俺でいいってなったら付き合ってほしい」

背が高くて、短髪で爽やか。誠実そうな雰囲気がすごく伝わってくる。

「って急に言われても困るよなー、ごめんなー」

手を顔に当てて、急に恥ずかしそうにする姿すら好感が持てる。


「い、いや困ってはないよ!ありがとう、告白というか、その、そう言うの初めてだから、なんて返していいかわからなくて。

友達からでよければ…お願いします」


「嬉しい!ありがとう!また、声かけるから!」


何度も頭を下げて、矢野くんは去っていった。

すごく良い人なんだろう。ここに呼び出すのだって緊張するはずなのに、わたしを気にかけてくれた。その姿を見て、誰かわからないからって断るのもなんか違う気がした。

< 24 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop