はちみつの景色
「え、花山くん…?」
声の聞こえた方を確認すると、間違いなくあの花山くんだった。
「あ、中川さん」
驚いた様子の花山くん。
私の方がびっくりだよ、なんで花山くんがここに?
「それじゃあ、千景、あとは頼んだ」
「いってらっしゃい」
おじいさんを見送ってしばらく沈黙。
「中川さん、家この辺?」
「あ、えと、いや…逆の西町…」
なんだか緊張感高まる。
片言になってしまった…!
「あ、中川さん。俺のことわかる?席前後の…」
「わ、わかるよ、そりゃ!」
いや、あなたは有名人だよ。むしろ私を知っていたのが驚きだよ。
「あ、えっと、1年間よろしく、中川さん」
照れたように柔らかく笑い、その髪の毛が窓から差し込む夕陽に透けていて綺麗だった。
「うん、よろしく…」
すごく見とれた。
そしてすごく緊張した。
「なんか、緊張する」
「え、花山くんが?」
「うん、俺緊張するタイプ」
「そんな風に見えないね」
「そう?」
花山くんがモテる理由がわかる気がする。
この独特の間や、雰囲気もきっと、女の子を魅了してしまうんだろう。