流転王女と放浪皇子 聖女エミリアの物語
「一つ聞かせてくれ」
エリッヒは身をかがめ、低い位置から男をにらみつけた。
「なんだ?」
「マウリスに国王暗殺をそそのかしたのはバルラバンなのか」
「自分が一番賢いと思っている男が一番間抜けだってことさ。孤立無援の裸の王様は後悔で震えてるだろうな」
不敵な笑みを浮かべながら男が一歩踏み出す。
間合いを保ちながらエリッヒは低い体勢をくずさずに後ずさりした。
「その間抜けと組んだおまえはどうなんだ」
挑発にも男は顔色を変えない。
「ああ、大間抜けだろうよ! だがな、金さえもらえば俺には敵も味方もない。おまえを殺して脱出するさ」
男が片足を上げて頭上に剣を振り上げ、重心をずらそうとしたその時、背後からシュライファーが体ごと突っ込んだ。
体勢を崩されて回廊に転がる男にのしかかり腕を押さえつけると、エリッヒに向かって叫ぶ。
「殿下! 早く」
エリッヒが飛びかかろうとした瞬間、男が腰をひねってシュライファーを振りほどいた。
再び飛びかかる執事に向けて男が剣を突き立てる。
シュライファーはためらうことなく飛び込んだ。
腹を剣が貫く。
執事は顔色を変えずに男にしがみついた。
剣を抜くことができない男に向かってエリッヒが飛びかかり首に剣を突き刺す。
男はうめきながら天を仰いだ。
重なり合う男三人は動かない。
外城郭から突入してきた兵士達の声がこだまする。
一人の息が絶え、もう一人の息が荒くなる。
エリッヒは身を起こしてシュライファーを抱きかかえた。
「しっかりするんだ。今抜いてやる」
剣を抜こうとする手を苦悶の表情で止める。
「いえ、もう……。お嬢様にこれを……」
執事が震えながら手を差し出す。
その手からセイウチの牙で作られた白いナイトの駒がこぼれ落ちた。
エリッヒはとっさにつかんだ。
欠けた脚を修復した跡がある。
「学問に身を捧げた執事は東洋の都に旅立ったと……。お嬢様にはそうお伝えください」
「分かった。必ず伝える」
「最後に一つ」
「なんだ」
「お嬢様を……」
「おい、なんだ!」
荒かった息が静まり、また一人、息が絶えた。
エリッヒは駒を握りしめて震えていた。
エリッヒは身をかがめ、低い位置から男をにらみつけた。
「なんだ?」
「マウリスに国王暗殺をそそのかしたのはバルラバンなのか」
「自分が一番賢いと思っている男が一番間抜けだってことさ。孤立無援の裸の王様は後悔で震えてるだろうな」
不敵な笑みを浮かべながら男が一歩踏み出す。
間合いを保ちながらエリッヒは低い体勢をくずさずに後ずさりした。
「その間抜けと組んだおまえはどうなんだ」
挑発にも男は顔色を変えない。
「ああ、大間抜けだろうよ! だがな、金さえもらえば俺には敵も味方もない。おまえを殺して脱出するさ」
男が片足を上げて頭上に剣を振り上げ、重心をずらそうとしたその時、背後からシュライファーが体ごと突っ込んだ。
体勢を崩されて回廊に転がる男にのしかかり腕を押さえつけると、エリッヒに向かって叫ぶ。
「殿下! 早く」
エリッヒが飛びかかろうとした瞬間、男が腰をひねってシュライファーを振りほどいた。
再び飛びかかる執事に向けて男が剣を突き立てる。
シュライファーはためらうことなく飛び込んだ。
腹を剣が貫く。
執事は顔色を変えずに男にしがみついた。
剣を抜くことができない男に向かってエリッヒが飛びかかり首に剣を突き刺す。
男はうめきながら天を仰いだ。
重なり合う男三人は動かない。
外城郭から突入してきた兵士達の声がこだまする。
一人の息が絶え、もう一人の息が荒くなる。
エリッヒは身を起こしてシュライファーを抱きかかえた。
「しっかりするんだ。今抜いてやる」
剣を抜こうとする手を苦悶の表情で止める。
「いえ、もう……。お嬢様にこれを……」
執事が震えながら手を差し出す。
その手からセイウチの牙で作られた白いナイトの駒がこぼれ落ちた。
エリッヒはとっさにつかんだ。
欠けた脚を修復した跡がある。
「学問に身を捧げた執事は東洋の都に旅立ったと……。お嬢様にはそうお伝えください」
「分かった。必ず伝える」
「最後に一つ」
「なんだ」
「お嬢様を……」
「おい、なんだ!」
荒かった息が静まり、また一人、息が絶えた。
エリッヒは駒を握りしめて震えていた。