流転王女と放浪皇子 聖女エミリアの物語
無視をしているのにエリッヒがついてきて勝手に話を続けようとする。
「あんたの言うとおり、俺は臆病者だ」
「何をおっしゃりたいのか分かりませんわ」
「何を言っても分からないだろうな。なにしろあんたは裏表がなく、まっすぐでつまらない女だからだよ」
「あなたにそんなことを言われたくはありません。そんなに嫌な女ならそばに寄らないでください」
「あんたを守るのが任務だから仕方がない。それに……」
男が女の耳に向かって怒鳴りつける。
「あんたが子供であるように、俺だって子供だからだ」
エミリアは返事をせずに歩き続けた。
宿の前まで戻ってきたとき、ジュリエの姿が目に入った。
道行く酔っぱらいが夜の貴婦人に声をかけていく。
笑顔であしらう女の余裕が苛立たしい。
「あら、おかえりなさい」
ジュリエに声をかけられてエミリアはくるりと背中を向けた。
すぐ後ろにはエリッヒがいた。
思わず後ずさったとき、今度は背中からジュリエに抱き止められた。
挟まれては逃げようがない。
「ちょっとお話をいたしましょうよ」
後ろから耳元に話しかけられて、エミリアは首を振った。
「私はシュライファー殿にあなたの家庭教師を任されたのですから」
執事の名を言われてエミリアは動揺した。
ジュリエがエリッヒに目配せをしてから宿の中庭へとエミリアをいざなった。
中庭では、相変わらず酔いの回った人々の歌と踊りが賑やかだ。
二人はさっきエリッヒが密会していた隅の暗がりまで来たところで、向かい合って立った。
相変わらず胸を強調したドレスがうらやましい。
「彼とケンカをしたの?」
エミリアは視線を合わせず、返事をしなかった。
「好きなの? 彼のこと」
思わず顔が熱くなる。
「ナポレモでお話ししたときに申し上げたでしょう。あなたのすべてを受け入れてくれる殿方が現れますよって」
「ち、違います。わたくしは決して……」
「では、なぜ嫉妬なさっているのですか」
「わたくしは決して……」
「ごまかそうとしているのも、その理由があるからでしょう」
問いつめられて言葉を探しているうちに息が乱れてきた。
ジュリエがそっと肩に手を置いて抱き寄せた。
エミリアは身をゆだねながら、こらえきれなくなった涙を流していた。
「あんたの言うとおり、俺は臆病者だ」
「何をおっしゃりたいのか分かりませんわ」
「何を言っても分からないだろうな。なにしろあんたは裏表がなく、まっすぐでつまらない女だからだよ」
「あなたにそんなことを言われたくはありません。そんなに嫌な女ならそばに寄らないでください」
「あんたを守るのが任務だから仕方がない。それに……」
男が女の耳に向かって怒鳴りつける。
「あんたが子供であるように、俺だって子供だからだ」
エミリアは返事をせずに歩き続けた。
宿の前まで戻ってきたとき、ジュリエの姿が目に入った。
道行く酔っぱらいが夜の貴婦人に声をかけていく。
笑顔であしらう女の余裕が苛立たしい。
「あら、おかえりなさい」
ジュリエに声をかけられてエミリアはくるりと背中を向けた。
すぐ後ろにはエリッヒがいた。
思わず後ずさったとき、今度は背中からジュリエに抱き止められた。
挟まれては逃げようがない。
「ちょっとお話をいたしましょうよ」
後ろから耳元に話しかけられて、エミリアは首を振った。
「私はシュライファー殿にあなたの家庭教師を任されたのですから」
執事の名を言われてエミリアは動揺した。
ジュリエがエリッヒに目配せをしてから宿の中庭へとエミリアをいざなった。
中庭では、相変わらず酔いの回った人々の歌と踊りが賑やかだ。
二人はさっきエリッヒが密会していた隅の暗がりまで来たところで、向かい合って立った。
相変わらず胸を強調したドレスがうらやましい。
「彼とケンカをしたの?」
エミリアは視線を合わせず、返事をしなかった。
「好きなの? 彼のこと」
思わず顔が熱くなる。
「ナポレモでお話ししたときに申し上げたでしょう。あなたのすべてを受け入れてくれる殿方が現れますよって」
「ち、違います。わたくしは決して……」
「では、なぜ嫉妬なさっているのですか」
「わたくしは決して……」
「ごまかそうとしているのも、その理由があるからでしょう」
問いつめられて言葉を探しているうちに息が乱れてきた。
ジュリエがそっと肩に手を置いて抱き寄せた。
エミリアは身をゆだねながら、こらえきれなくなった涙を流していた。