流転王女と放浪皇子 聖女エミリアの物語
筒型のチュニックの中から、首まで隠れる形の服を選んで体に当てる。
腰紐で縛り付けるようになっていて、職人向けの動きやすいチュニックだ。
エミリアはズボンも選び出した。
臑の部分に当て布があって丈夫な狩猟用のものだ。
「おい、それは男物だぞ」
「ええ、その方が旅には都合がよいでしょう」
服装も身分や性別によって厳密に決められていた時代である。
女性が男性の格好をするのは悪魔の所行とみなされることもあり、見つかれば処罰される可能性もあるのだ。
「いいではありませんか。仮装パーティーへ行く途中だということにすれば」
当惑している男にエミリアはもう一言つけ加えた。
「追っ手を振り切るには、男装の方が良いでしょう」
案外まともな理由で驚いた。
そういうことなら反対する理由はなかった。
髪の毛を切った時にもう覚悟はできていたのだろう。
靴も男物の頑丈なものを選んでいる。
「さすがに大きさが合わないだろう」
エリッヒの言葉に返ってきた返事は素っ気ない。
「詰め物をすればいいでしょう」
エミリアは古着一式を店の奥にある衝立に引っかけた。
「着替えます」
「そうか」
男の返事に、当惑した表情が返ってくる。
ん?
「どうした?」
「ですから、着替えるのです」
「おう、はやくしろ」
エミリアがにらんでいる。
「のぞき見をする趣味があるのですか」
「あ、これはすまん」
エリッヒはあわてて店先に出た。
馬の首筋を撫でてやりながら待っていると、店の中で声がした。
「おい、あんた! そいつは……」
いつのまにか戻ってきていた店主が衝立の陰をのぞき込んでいた。
だが、店主の目には好色な様子はなく、前歯のない口をだらしなく開けて震えていた。
エミリアの胸にある瘡蓋状の痣を見てしまったのだろう。
エリッヒが間に入った。
「のぞき見とは趣味が悪いな」
店主が両手を広げて声を張り上げようとした。
「だって、あんた、こいつは『しに』……」
エリッヒが胸ぐらをつかんでにらみつける。
「わ、分かりましたよ。着替え終わったらさっさと出ていってくれ」
口をゆがめながら店主が店の奥に引っ込んだ。
腰紐で縛り付けるようになっていて、職人向けの動きやすいチュニックだ。
エミリアはズボンも選び出した。
臑の部分に当て布があって丈夫な狩猟用のものだ。
「おい、それは男物だぞ」
「ええ、その方が旅には都合がよいでしょう」
服装も身分や性別によって厳密に決められていた時代である。
女性が男性の格好をするのは悪魔の所行とみなされることもあり、見つかれば処罰される可能性もあるのだ。
「いいではありませんか。仮装パーティーへ行く途中だということにすれば」
当惑している男にエミリアはもう一言つけ加えた。
「追っ手を振り切るには、男装の方が良いでしょう」
案外まともな理由で驚いた。
そういうことなら反対する理由はなかった。
髪の毛を切った時にもう覚悟はできていたのだろう。
靴も男物の頑丈なものを選んでいる。
「さすがに大きさが合わないだろう」
エリッヒの言葉に返ってきた返事は素っ気ない。
「詰め物をすればいいでしょう」
エミリアは古着一式を店の奥にある衝立に引っかけた。
「着替えます」
「そうか」
男の返事に、当惑した表情が返ってくる。
ん?
「どうした?」
「ですから、着替えるのです」
「おう、はやくしろ」
エミリアがにらんでいる。
「のぞき見をする趣味があるのですか」
「あ、これはすまん」
エリッヒはあわてて店先に出た。
馬の首筋を撫でてやりながら待っていると、店の中で声がした。
「おい、あんた! そいつは……」
いつのまにか戻ってきていた店主が衝立の陰をのぞき込んでいた。
だが、店主の目には好色な様子はなく、前歯のない口をだらしなく開けて震えていた。
エミリアの胸にある瘡蓋状の痣を見てしまったのだろう。
エリッヒが間に入った。
「のぞき見とは趣味が悪いな」
店主が両手を広げて声を張り上げようとした。
「だって、あんた、こいつは『しに』……」
エリッヒが胸ぐらをつかんでにらみつける。
「わ、分かりましたよ。着替え終わったらさっさと出ていってくれ」
口をゆがめながら店主が店の奥に引っ込んだ。