罪作りな彼は求愛方法を間違えている
『そうだ』と頷いた彼の隣になぜ自分がいて、一緒に飲んでいる理由を尋ねられた私は、自分で自分を傷つけていた。
『…私を理由に煩わし誘いを断りやすいし一緒にいれば声をかける女性もいない。妹のような存在の私なら恋愛云々って事にならないからですよね』
否定しなかった高橋さんは、昔の彼女に似ているだけの恋愛対象外の私に、なぜキスしたんだろう?
彼にとってキスなんて軽い挨拶みたいなものだとしても、私は……軽く考えられない。
彼が好きだから…
どんな顔をして会えばいいのか?
コウ兄のお店に行くのをやめようかと躊躇ってても、自然と足はバー【S】に向いて歩いていて、今、看板を見つめながら大きくため息を吐いた。
それでもドキドキと速く脈打つ胸は静まらず、緊張で口が乾きネバネバして、我慢できず勢いに任せドアを開けた。
いつものように、「いらっしゃいませ」の声と共に、コウ兄は視線を席に移し座るよう促していた。
その動きにいち早く気がついた高橋さんが、振り返り笑みを浮かべ手招きしている。
いじめ甲斐のある獲物を見つけた時のようなニヤリと笑ういつもの彼と違い、婀娜っぽいというか魅惑的な笑顔に足が止まった。
自分に向けられた笑顔と思えず、つい振り返ってしまうが、背後には誰もいない。