罪作りな彼は求愛方法を間違えている
「…飲まないのか?」
「えっ、飲むわよ」
利き手と違う反対の手でグラスを持つと、隣からグラスが現れてカチンと音を鳴らした。
「おつかれ」
「…おつかれ様、です」
やはり、おかしいと思い、意を決して聞くことにした。
「どうしたの?手を繋いだり、『おつかれ』なんて言ったこともないのに、先週も変だったけど今日の高橋さんも変だよ」
笑顔だった顔が、一気に不機嫌になり肩を落とし項垂れて流し目を向けられた。
男の悲し気な目に、他の言い方をすれば良かったと後悔していたら、大きく息を吐いた高橋さんは、体を半分こちらに向けて切な気に笑った。
「変か?」
「変でしょ…こういう事は恋人同士がするものじゃない?」
2人の間で繋がれた手をぶらぶらと揺らし、遠回しに離すように言ったみる。
カウンター下で繋がれていた手を持ち上げた高橋さんは、見せつけるように私の手の甲に唇を押し付けキスをしながら艶めかしく見つめてる。
今度は顔どころか、耳まで真っ赤になっているとわかるぐらい、顔も耳も熱い。
遠目に私達2人を傍観していた女性客達の騒めきが聞こえ、居たたまれなく手を引き抜こうともがいたら、彼に引き寄せられて前屈みになり、危うく唇同士が触れそうになった事で心臓の音が更に大きくなり、周りの悲鳴も聞こえてこなくなる。