罪作りな彼は求愛方法を間違えている
「もう、まだ背中洗ってないのに」
「そうだったか?なら、俺が洗ってやる」
わざとらしくとぼけたセリフの後の、恐ろしいセリフに、慌てだす。
「い、いや。いいよ。高橋さんが終わるまで待つから…ねっ⁈」
お互い裸だと忘れていて振り返ると、男らしい筋肉質の引き締まった体が目に飛び込んできた。
そして、自然と目が、見てはいけないものに目が向くのは、どうしてだろう?
「…バカ。なんでこっち向いているのよ」
慌てて背を向けて理不尽に怒ったら、背後でクックククと喉奥で笑いを噛み締める声が響く。
「もう隅々まで見た仲なのになぁ、照れるなよ」
うなじに彼の唇が乗る。
そして、キツく吸い付かれた。
「…んッ…何するのよ」
「もう俺のものって印」
そう言いながら、スポンジで背を洗ってくれた高橋さんは、お互いの体の泡をシャワーで流してくれるのだが、彼の思わせぶりな言葉に私は戸惑っていた。
なんだかんだと悩みながら結局、体の関係を結んでしまい、2人の関係性にモヤっとしていたところに、独占欲を垣間見せられ、期待が高まるのだが、肝心な言葉はくれない。
「風呂入ろーぜ」
何もないバスタブの中に既に彼は入っていて、私の手を掴み引き込み、彼の前に背を向けて座らせると、お湯を溜め出した。