早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
そうして、打ち合わせスペースを出ようとしたときだった。進藤さんの口から、これまでと打って変わって弱気な声がこぼれる。


「……ごめんなさい、本当はわかってる。私の担当が嫌なら代わるから」

「違うって。昔のこと気にするほど、俺はガキじゃねぇよ」


尚くんは、ふっと笑いをこぼし、即答した。チラリと彼女を見やれば、切なげに眉を下げ、かつ安堵したような表情を浮かべていた。

同時に、胸のざわめきが大きくなる。

一体、過去になにがあったんだろう。ふたりはどんな関係? 尚くんは今、どんな顔をしていた……?

ひたすら疑問符を浮かべながら、トレーを片づけて席へ戻ると、泉さんが興味津々でこちらに身を寄せてくる。


「どうだった?」

「なんか……ちょっとワケありっぽかったです」


動揺をひた隠しにして、含みのある笑みを浮かべて言うと、泉さんは「マジか」と短く呟いた。

謎は深まる一方で、言いようのない不安を覚える。尚くんと深い関わりがある女性が会っているだけで、かろうじてあった〝彼の妻〟という自信は崩れそうになっていた。

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