早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
進藤さんがお帰りになって二十分ほど経ってから、私も今日の勤務を終えた。
時刻は午後一時。胸の中はもやもやしていても、それなりにお腹が空いているので、一階のカフェで軽食をとることにする。
結局、鬼頭さんはあれからずっとミーティングをしていたので、あの話の続きを聞くことはできなかった。
尚くんが帰ってきたら、進藤さんとのことを聞いてみようかな。それとなく、さりげなく。
そんなことを考えながら、コーヒーの香ばしい香りが漂うカフェに入り、ほどよく混んでいるレジに並ぼうとしたときだった。
「あらっ、あなたさっきの……?」
窓際の、二人掛けの小さなテーブルのほうから声がして、自分に言われたのかはわからなかったが思わず振り向く。
そうして席に座っている女性と顔を見合わせた瞬間、心臓がドクンと重い音を響かせた。
ひとりでランチをしているのは、帰ったはずの進藤さんだったのだ。
「あっ……どうも、こんにちは!」
咄嗟に笑顔を作り、とりあえず挨拶をした。彼女がいたことも、声をかけられたことにも驚き、少々挙動不審な動きになってしまう。
えっと、なにか用なのかな。もし仕事のことだとしたら、私は答えたくても答えられないけど……。