熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「ええ。……それくらいなら」
「ありがとう。華奢だけど芸術家の手をしているな、詩織は」
私の手をまじまじと眺め、南雲が呟いた。
「そりゃそうよ。ろくにクリームも塗らないから荒れ放題だし、爪はマニキュアを塗るどころか、邪魔になるから伸ばしたことすらないわ。全然女らしくないでしょう?」
彼は出会ってからずっと私を褒めてばかりいるけれど、よく見れば恋愛対象にするには欠陥ばかりの女。それに気づけば彼の熱も冷めるんじゃないかしら。
そう思って、わざと自分を卑下するようなセリフを言ってみたのだけれど。
「でも、詩織はそんな自分に誇りをもっているんだろ? 俺は、きみのそういうところに惹かれたんだ。メイクなんかしなくたって、マニキュアなんか塗らなくたって、しっかりと心に一本芯が通っている。俺にはそれが、何より美しく思えるんだ」
南雲のそんな言葉に、私は思わず目を見開いた。