熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
私は世の他の女性のように、着飾ったりメイクしたりする喜びや楽しみを捨てた自分を恥じたことはないけれど、女としての魅力は一切ないのだろうと勝手に思っていた。
だから、アトリエで私を『美人』と評した南雲のセリフが不可解だったし、彼の口説き文句もどこか信用ならなかった。
でも、彼が私に魅力を感じているというのは、どうやら嘘じゃなさそうだ。
……それにしても、なんて物好きな男なんだろう。
「南雲って、変な人ね」
うまい言葉が見つからず、そんなふうに声をかけると、南雲はがっくり肩を落として言った。
「なぁ詩織、その南雲ってのはやめてくれないか? こんな素晴らしいリゾートにきみと二人きりでいるという、甘いムードがぶち壊しだ」
「……だったらなんて呼べばいいのよ」
「梗一。詩織がそう呼んでくれれば、今日のレクチャーは終わりにしよう」
い、いきなり名前で呼べって……なかなかハードルの高い要求を。