熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
胸がぎゅっと締め付けられるのを感じながら、私は梗一と近くのカフェに入った。お互いコーヒーを注文したけれど口をつける気になれず、重苦しい空気が漂う。
けれど、こうなってしまったらもう真実から目を背けていられない。
今までずっとそれを見ないようにして、刹那的な幸福に浸るだけだった自分も悪いのだ。
私は意を決して、梗一に質問した。
「さっき言いかけていた、あなたの事情ってなにか教えてくれる?」
梗一はコーヒーを一口飲んで、下を向いたまま答えた。
「……日本に、許嫁がいる」
「えっ?」
まったく予想していなかった展開に、頭が真っ白になる。
だって許嫁……って。結婚する相手は、すでに決まっているってことじゃない。
でも、よく考えれば梗一は南雲グループの御曹司。そういう話があっても全く不思議ではない。だったらどうして、私に会いに来たりなんて……。
「でも、ほかに本気で好きな相手がいる場合は俺の意思を尊重すると、今までは父も言ってくれていたんだ。俺が詩織と結婚しても何の問題もない……はずだった」
含みを持たせた言い方に、不穏な空気を感じ取る。おそらく、今は、その状況が変わってしまった……ということなのだろう。