熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「なのに、今になって……その許嫁と結婚しないのなら、俺を次期社長として認めないだなんて、父親が言い出した。その女性は取引先の企業の娘だから、結婚すれば確かに会社の利益になるだろう。でも、父の狙いはそこじゃない。ただ、俺を社長にならせたくないだけなんだ。俺が今まで築いてきたものを無視して……別の男を社長の座に就かせるために」
「別の男、って……?」
思わず聞き返すと、梗一は苦虫を噛みつぶしたような顔で言った。
「……兄だよ。俺が詩織に会いに行くのを知っていた兄は、俺のいない隙に社長である父に〝やはり長男として、自分が会社を継ぎたい〟なんて勝手なことを言い出したらしいんだ。父も父で、好き勝手していた兄にあれほど苦言を呈していたくせに、不思議と長男というものは可愛いらしく、兄を社長にすることに積極的に動き始めたと……今朝、電話で秘書から聞いたんだ」
そっか……。梗一が朝から怒鳴っていたのは、そのことだったんだ。
自分がいない間にそんな重要な話が勝手に進められていたら、怒るのも当然だ。そして、すぐに日本に帰らなきゃ、と思うのも。
そこまえ考えて、胸がチクリと痛む。