熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

「でも、俺は社長の座も、詩織のことも、諦めるつもりなど全くない。だからきみを日本に連れ帰って、強引に結婚するつもりだ」

そんな……。それってつまり、私たちの結婚は、誰にも望まれず、祝福されないということよね? しかも、彼が社長になれる可能性を潰すことにもなりかねない。

彼の気持ちはうれしいけれど、感情だけで動いていい状況なの?

「冷静になって、梗一。結婚って、意地でするものじゃないと思う」

「意地……? 俺はそんなつもり――」

「今すぐ答えを出さずに、話し合ってみたら? お父様のことは知らないけれど、お兄さんなら……きっとわかってくれるんじゃないかしら」

今まで、彼の兄が私もよく知る人物であることを、梗一の口から肯定された記憶は一度もない。

でも私は確信している。ずっと前、心から信頼し恋心まで抱いた〝先生〟が、彼の兄であることを。

そして先生なら……弟である梗一がずっと努力して築いたものを奪うなんて理不尽なこと、しないと思うのだ。

「俺より兄をかばうのか」

梗一が、愕然としたように呟く。私の思いが、歪んだ形で届いてしまったようだ。



< 86 / 181 >

この作品をシェア

pagetop