熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「違うわ。反対を押し切っていきなり私と結婚する、じゃなく、ちゃんと周囲の人たちと話し合わないとって思っただけよ!」
「そう言って、本音では俺と結婚したくないんだろう。やっぱり、まだ兄のことが……」
「だから、どうしてそうなるの……っ!」
ダメだ……このままじゃ、感情的になるばかりで、平行線。
私は額に手を当てて、ヒートアップした自分を落ち着かせようとするけれど、梗一はなおも、私の気持ちを勝手に決めつけようとする。
「詩織が一緒に日本へ帰らないなら、俺は許嫁と結婚することになる。詩織は、それに耐えられるのか?」
「そんな聞き方はずるいわ。私は……!」
私は……梗一が好き。だから、こんな言い合いはしたくないのに……今の彼の耳には、恋と仕事との間に揺れる私の気持ちが、全くわからないみたいだ。
おしゃれなんかしなくても、荒れた手をしていても、画家である私を好きだと言ってくれたのに。そして、私の絵も……好きだと言ってくれたのに。
私の中で、ぷつりと何かの糸が切れる音がした。
やっぱり……私に、恋愛するのは無理だったのだ。
だとしても、今までのように、キャンバスを見つめる日々に戻るだけ。梗一と過ごした甘い日々は夢を見ていたのだと思えば……何も変わらない。