熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
諦めに似た感情が静かに胸に広がっていき、私はとうとう梗一に決定的なひと言を告げた。
「私は……あなたがほかの人と結婚するより、あの島で絵を描けなくなる方がずっと怖いわ」
そう言って見つめた先の彼は、瞳に絶望の色を浮かべて放心していた。
まさか、自分が〝選ばれない〟とは思っていなかったのだろうか。
あなたのそういう傲慢なところがキライで……なのに、いつの間にか好きになってしまった。
梗一との関係は、理屈で説明できない恋だった。人間からただの動物に戻ってしまったみたいに求め合い、そのたびに熟した恋心が、また互いを欲しがった。
言葉が足りなかったと言われれば確かにその通りだと思う。
……でも、今からではもう手遅れ。
どんなに言葉を尽くしたところで、彼とは分かり合えない気がした。
「帰るわね。私は私のいるべき場所へ」
結局ひと口も飲まないまま冷めたコーヒー代をテーブルに置き、席を立つ。大企業の御曹司である彼にとっては端金だろうけれど、できるだけ対等な立場で別れたかったのだ。