ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
診療所にいる間に日は高くなっていた。

レオンに抱かれて眠るリラの顔色も先ほどよりは良くなっていた。

家に戻る途中、レオンは殆ど口を利かなかったが自宅に戻りリラをベッドに寝かしつけると紹介状を見せて欲しいと言って来た。

私は鞄から貰ったばかりの紹介状を取り出し、レオンに差し出す。

彼は内容に目を通すと直ぐに返してくれた。

私は受け取りながら苦笑いのような表情を浮かべていた。

「あれだけ拒否したラヴァンディエ帝国に行くなんて……」

「イリス何も心配しなくていい。ラヴァンディエ帝国に入ってもリラに危険が及ぶことはないよう最大限に手を尽くすと約束する」

レオンが私を見つめ真摯に言う。

「……お願いします。どうかリラを守ってください……散々拒否しておいて勝手だと思われるかもしれないけど」

行くと決まったからにはレオンに頼るしかない。

「リラだけでなくイリスもだ。俺が必ずふたりを守るから」

私は咄嗟に顔を逸らしていた。レオンに見つめらてれそんな風に言われると、平然としていられなくなる。小さく深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

「あの……レオン様はこの病院をご存知なのですか?」

「ああ。紹介状に書かれている病院はラヴァンディエでも最新の設備を誇る医院で皇家が支援しているんだ。事前に使者を送りリラの受け入れ態勢を整えるようにする」

皇家として支援している、ということはレオンの息のかかった病院であるという意味だ。

「病院はラヴァンディエ帝都にあるのですか?」

「いや、都市カサンドラにある」

都市カサンドラは、帝都とティオール王国国境の中間あたりに位置する、豊かな都市だ。
レオンの答えに少しほっとしていた。帝都に行くよりは気が楽だ。

「なるべく早く向かった方がいいな。リラは俺が見ているからイリスは出発に必要な準備を進めておいてくれ」

「はい」

私は一番大き鞄をクローゼットの奥から取り出した。

ルメール村を出てこの町に移り住んだ時に持って来たものだけれど、それ以来遠出をする機会がなくずっとしまい込んでいた。

いつかリラを旅行に連れて行ってあげたいと思っていたのに、こんな理由で使うことになるなんて。

数日分の着替えなど必要最低限のものに絞り込み荷造りを終え、その後はあまり音を立てないように家の中の掃除を始めた。

水回りや床や家具。しばらく戻れないかもしれないので念入りに行っていると、玄関の扉がコンコンと叩かれる音が聞こて来た。

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