お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
つまり、それってーー…
「こら。想像しない。」
「しっ、してませんよっ!!」
「ふふ。はい、もうこの話は終わり。質問の答えは出たでしょ。」
クールにそう笑った彼は、すっ、と私の隣から立ち上がった。
トレンチコートを羽織り直す彼の背中を見上げ、私はつい、アレンの影を重ねてしまう。
ぽつり、と出た声は、完全に無意識だった。
「私が誰かと結婚したとしても…アレンにドレスを選んで欲しくはないなぁ…。誰かに好きって言ってもらえても、アレンが嫌な気持ちになるなら、私は一生独り身でいいかも…」
すると、口からこぼれた独り言を聞いていたメルさんは、くすりと笑ってこちらを振り向いた。
「それ、言ってる意味、自分で分かってる?」
「はい?」
「きっと、アレンが聞いたらタダじゃ済まないよ。」
きょとんとして首を傾げていると、メルさんは小さく息を吐いて「あいつにも同情するな。」と低く続ける。
「ニナ。君は、アレンのことをどう思っているの?」
「え…?うーん…良き相棒というか、お世話してくれるお母さんというか、幼馴染みですし…」
「ふうん、その程度か。じゃあ、もしアレンに好きな人ができて、彼女を優先したいから執事を辞めるって言ってきたらどう思う?」
「それは、嫌……です…」