お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。

つまり、それってーー…


「こら。想像しない。」


「しっ、してませんよっ!!」


「ふふ。はい、もうこの話は終わり。質問の答えは出たでしょ。」


クールにそう笑った彼は、すっ、と私の隣から立ち上がった。

トレンチコートを羽織り直す彼の背中を見上げ、私はつい、アレンの影を重ねてしまう。

ぽつり、と出た声は、完全に無意識だった。


「私が誰かと結婚したとしても…アレンにドレスを選んで欲しくはないなぁ…。誰かに好きって言ってもらえても、アレンが嫌な気持ちになるなら、私は一生独り身でいいかも…」


すると、口からこぼれた独り言を聞いていたメルさんは、くすりと笑ってこちらを振り向いた。


「それ、言ってる意味、自分で分かってる?」


「はい?」


「きっと、アレンが聞いたらタダじゃ済まないよ。」


きょとんとして首を傾げていると、メルさんは小さく息を吐いて「あいつにも同情するな。」と低く続ける。


「ニナ。君は、アレンのことをどう思っているの?」


「え…?うーん…良き相棒というか、お世話してくれるお母さんというか、幼馴染みですし…」


「ふうん、その程度か。じゃあ、もしアレンに好きな人ができて、彼女を優先したいから執事を辞めるって言ってきたらどう思う?」


「それは、嫌……です…」


< 96 / 164 >

この作品をシェア

pagetop