潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
「出産後に夫から、『娘だから自分の名字にしたい』と懇願されました。いずれは何処かの誰かの所へ嫁に行ってしまうんだから、せめて名字くらいは自分と繋がっていたい、と親バカなことを言われてしまって」

「それで百瀬の姓を?」

「そう。どうせ結婚しても別姓にしない限りは、どちらでも一緒のことなのにね」


『高畑香純』でも良かったのに…と残念そうに話す母の声に、尚行さんは同調しつつも、うーん…と納得のいかない声を漏らして腕組みをした。


「ご主人様は、娘さんを可愛く思っていらしたのね」


そりゃまあそうよね…と彼のお祖母さんは頷きを繰り返してくるけど、母はそれも全く困った様な顔つきで、だから何かと香純には不自由をさせてしまいました…と告白している。


「あの人が家政婦を雇うのを承諾してくれていたなら、香純はもっと、栄養満点な食卓を囲むことが出来たと思うんですけども」

「えっ?」


どういう意味?と三人の視線は母へと移る。
私も滅多なことを言い出すんじゃないかとヒヤヒヤして、母に目を向けて窺った。


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