潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
『食の祭典』と称された見本市は、大きなイベントホールで行われていた。

参加各社は部門ごとのブースに分かれて自社の新商品や人気商品を陳列し、行き交う人々に向けて試食販売を繰り返しながら、宣伝・説明を繰り返している。



「なかなかの盛況ぶりですね」


初めて来た…と話す武田は、さっきからブースの前を通る度に呼び止められ、その都度試食を勧められて断りきれず、手に持つビニール袋がどんどん増えていっていた。


「そんなに沢山抱え込んでたら、いざ名刺を…と言われた時に困るだろ」


仕様がないな、と手にしているビニール袋を半分取り上げると、彼女は驚いた様な眼差しで見上げ、さっと頰を染めながら「すみません」と頭を下げる。


「勧められて応じるだけでも構わないが、その商品の何がいいのかをちゃんと聞いておかないと来た意味がないぞ」


そう話すと武田は一瞬唇を噛み、「そうですね」と反省したように肩を落とす。

そんな彼女の仕草を目に留めながら視線を前に向け直し、次はどこへ行こうか…と企画管理部の連中に声をかけようとした。


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