潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
どちらへ…と声をかけようとした武田はぐっと口籠もり、俺が進む方向を確かめて、無言で成り行きを見守る。

俺はその視線を背中で受け止めながらテントへ近付くと、まだ指を差したままの体勢でいる女子社員に微笑みかけ、「その節はどうも」と深く一礼した。



「お…お久しぶりです」

「その節は大変お世話になりました」


社員たちは一様に畏まって礼をすると揃って顔を見合わせ、オドオドというか、ビクビクした雰囲気で俺の方へと目を向ける。


「きょ…今日は、新規開拓ですか?」

「うちの新商品も是非、味わってから他にお回り下さい」


顔を引きつらせながら言葉を発し、俺はそれに頷きながらブースの奥を窺う。



「あの…」


そう言いながら俺に声をかけてきた女性に目を向け、「今日、百瀬さんは?」と訊ねてみた。


二課の社員が来てたから、てっきり応援に寄越されているんだろうと思ったんだが、姿が見えないのでガッカリして確かめてみると、マザーズの営業二課で彼女の足を大いに引っ張っていた新人の社員は……


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