潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
香純のことを呼び捨てにした相手は、パイプ椅子に横たわっている女性の手をまだ握っていて、大事にそうに見つめられていると、相手の女性も安心したのか目を閉じ、すぅっ…と再び意識を手放す。


(こいつ…)


まさか…と俺はとあることが思い出され、相手の後頭部を睨み付ける。
香純はその間も足を止めずに前へと進み、アルミドアの前へ来ると後ろの方に振り返った。


「尚行さ…っ!」


俺を呼ぼうとしたが、背中越しのドアが急に開き、大袈裟に驚いてしまったらしい。
ビクッと肩を竦ませて外から入ってくる相手を見つめながら、更に大きく目を見開いた。


「副社長!」


ドアを開けた相手は声を発して俺を呼び、部屋の中にいる連中も武田と俺を交互に見つめ、当然部屋の隅で女性を介抱していた相手も見返してくる。


「なんだ」


冷静に対応すると武田は少し戸惑い、「いえ、あの」と狼狽えながら、周りの気配を読み取った。


「皆が…外で待ってます」


お早く…と言うと香純に目線を配り、ぺこっと小さくお辞儀をした。


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