はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「あの、私に話があるんですよね? すみません、私語を慎むべきですよね?」


ゲストがいない場所とはいえ、仕事中の私語はよくない。それが人の噂話ならなおさらだろう。


「いや、たまに息抜きで話すのは全然構わないよ。お客様の前ではいけないから、客室や廊下とかは謹んでくれたらいいけど」

「はい、気を付けます。ありがとうございます」

「それと、あー、やっぱりいいや。うん、これからもがんばってください」


歯切れの悪い言い方で支配人は話を終わらせて、この場を去ろうとした。

しかし、今度は私が腕を掴む。


「待ってください。なにか他に言いたいことがあったのなら……』

「いや、特には……。あ、これから予定あるから」


支配人はやんわりと掴んでいる私の手を払って、腕時計で時間を確認する。本当に予定があるようだから、これ以上引き止めてはいられない。

だけど、ひとつだけ!


「あの、私に時間をいただけますか?」

「えっ?」


前置きもなく言ったお願いに支配人は、何事かというような驚いた声を発した。
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