はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
一緒に来た母が少し前に出て、頭を下げる。


「昨日はちゃんとお礼を言えずにすみませんでした。娘を助けていただき、ありがとうございました」

「いえ、とんでもございません。お礼でしたらちゃんと娘さんからいただいていますので、お気になさらないでください」


爽やかに微笑まれて、母は上機嫌になった。


「ああいう気持ちのよい接客をする人がいると、こっちまで朝から気持ちよくなれるわね」

「うん、そうだね」

「藍果、ああいうタイプの人、好きでしょ?」

「ちょっと、お母さん! 何を言うのよ」


母の予想もしない言葉に、食べていたデニッシュパンを喉に詰まらせそうになった。今の言葉が聞かれていないかと周りを見回したが、彼は変わらず入り口でにこやかに挨拶をしていた。

耳に届いていない様子にホッとして、母に向かって口を尖らせた。


「だって、藍果がかっこいいという俳優さんに似てるじゃない?」

「確かにそうだけど、こんなところで言わないでよ。タイプだからといって、何も出来ないんだから」


何か出来たとしても、大人の彼が中学生を本気で相手するわけがない。
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