はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「ビックリした。まさか本当にまた会えるなんて。それもここで」

「湊人さん……」


一言だけ発した彩音はまだ私の腕を掴んだままで、放心している。どうやらふたりは知り合いらしいけど、彩音の様子がおかしい。

「彩音?」と小さく呼び掛けた。彩音にはどんどん近付いてくる人しか見えていない様子。


「片瀬くん、仲村さんと知り合い?」


神林さんがふたりを見比べてから、訊ねた。


「はい。仲村さんは、前に俺がバイトさせてもらったペンションのオーナーの娘さんなんですよ」

「ああ、例のペンションの! 仲村さんがうちに就職したのは偶然? それとも片瀬くんから聞いて?」

「偶然ですよ。仲村さんにはここに勤めると話したことはないですから」


彩音に対しての質問にも片瀬さんが答えていた。彩音はまだじっと彼を見ているだけで、なにも話さない。

片瀬さんも驚いていたから、お互いがここに勤めていることを知らなかったのだろう。研修期間中に本社には一度しか来ていないし、営業部のフロアに入ったのは今日が初めてだったから、顔を合わせることもなかった。
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