はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
業務以外のことを考えてしまっていた私は、神林さんの声で現実に引き戻された。

今、何を思った?

支配人と恋?

ドアが完全に閉まったのを確認してから、彩音が私の方に顔を向けた。


「藍果。今夜ご飯一緒に食べない?」

「うん、いいよ。彩音の話も聞きたいし。あ、ごめん、お手洗い行ってきてもいい?」

「うん。神林さんが戻ってきたら、話しておくね」


彩音の話を聞きたいから、ご飯のお誘いは嬉しいけれど、それよりも今は頭を冷やそう。これから覚えることがたくさんあるのに余計なことを考えてはいけない。

それに、彩音とも話して、支配人は立場的に合わないから、恋さえもしてはいけない。傷付く結末が見えている恋なんてしても良いことはない。

トイレに向かいながら、目を覚ますよう自分の頬を両手で軽く叩いた。本当は顔を水で洗って冷やしたいところだが、さすがにそこまでは出来ない。

トイレはエレベーターの先にあった。エレベーターの前を通りかかった時、タイミングよくこの階に着いたようで、ドアが開く。


「あ、横川さん」

「あ、お、お疲れ様です」


なぜこのタイミングに支配人が出てくるの……。
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