俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
だから、いっそのこと誰も知り合いがいない場所に行ってやろうと思った。そこでまた自分をやり直すしかない。

目的地に着いたら、レースやリボンがついた今着ている服は脱いでしまおう。装飾品も外して、着飾る必要のない農家の人のようになろう。

私の目から、また涙がこぼれた。



俺はクリスタル・モーガンを追いかけて、今列車の中にいる。クリスタルの傷ついた顔は最高だった。人は、絶望や悲しみに染まった顔が一番美しい。

目的地に着くのは夜中になるだろう。クリスタルが途中で降りることはない。

俺は少し眠ろうと目を閉じた。



目的地に着いたのは、真夜中のことだった。この場所に来たことはない。初めて来る場所……。

いつも寝ている時間なのに、ちっとも眠くない。それはきっと、悲しみが心を支配しているから。

私は駅を出て、とりあえず歩く。この時間だともう馬車はない。寝泊まりできるところを探す。

ジャックが襲ってくるかも、とかそんなこと考えることもできない。暗闇の中をひたすら歩く。怖いという気持ちよりも、悲しみの方が大きい。

しばらく歩くと空き家を見つけた。空き家といってもずいぶん新しい。

私は迷わずにその空き家へと足を踏み入れる。
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