刺激を求めていたオレが念願の異世界転生を果たすも、そこはラスボス手前のセーブポイントだった件
ティケルヘリアがにこっと笑い、近づいてくる。オレは必死に逃げようとするが、絡まる腕を解くことができないでいた。「ふふふ」 と背中から笑い声がして、恐怖が身体中を支配していく。
「あなたのその表情・・・・・・堪りませんねぇ」
ティケルヘリアは歪んだ口元を手で隠しながら、とろけた瞳で、恐怖で震えるオレのことをじっとりと見つめていた。
「あら、あなた良かったじゃない。ティックに気に入ってもらえて」
「い、いやだ、やめろ・・・・・・」
どんどん近づいてくるティケルヘリア。上気した息遣いすらも聞こえてくる。脳裏には、前回の記憶が蘇り首筋が熱を帯びていくように感じ、それに反して体中の血液は冷めていく。
「やだ、死にたくない・・・もう、死ぬのは嫌だ」
オレの身体はガタガタと震えだしていた。腰を固定している腕を振りほどこうと全力で暴れても抜け出すことができない。そうこうしている間にもティケルヘリアはゆっくりと目の前に迫ってきている。死そのものが近づいてきている。
ティケルヘリアの冷たい手が頬に触れ、発狂しそうになった時、遠くに聞こえていた長い詠唱が終わった。
「二人とも遅くなってゴメンなさい。よくやったわ「ダークプロージョン」!!」
ミネルヴァお姉さまの大魔法が大気を震わせていく。ティケルヘリアとノブレスの間に小さな小さな虚無が発生した。
「なんだこれは・・・・・・吾輩の腕が!!飲み込まれる」
光も重力も全てを飲み込む虚無は、瞬く間に周りのありとあらゆる物を飲み込みながら成長していく。オレの頬に手をかけ伸ばしたティケルヘリアの腕は、虚無の発生地点に近かった為に何よりも先に吸い込まれていく。
「これほどの魔法を人間が生み出すなんて・・・・・・・仕方ない」
オレを拘束していた腕が解かれる。背中から飛び出したノブレス、広がり続ける虚無
を両手で包み込むと詠唱を始めた。ティケルヘリアは吸い込まれる腕を肩から引き裂いて、ミネルヴァお姉さまへと向かっていった。
放り出されたオレは、まだ血の気の戻らないまま這いずりながら少しでも遠くへと逃げようとしていた。カーペットにオレがはい回る不格好な跡が道のように残されていく。
「舐めんじゃないわよ、人間!!!」
ノブレスが虚無を打ち破った瞬間、それまでに吸い込んだ、光も音も物質も、大気やあらゆる質量さえもを一気に吐き出した。その衝撃波は凄まじくオレの身体は一瞬にして飛ばされてしまった。
「こんな勢いで飛ばされたら・・・・・・壁に叩きつけられて圧死する」
死の初体験は斬首で、今度は圧死か。世界樹の弓も吹き飛ばされてしまって、何かスキルを使って減速することもできない。成すすべなく壁に叩きつけられるしかないのだと思った時、「ツバサ!!」 と声が聞こえた。
誰かが吹き飛ばされるオレの身体を受け止めた。その衝撃で肺が潰れたのだろう、激痛と共に吐血する。誰かを巻き込んで、転がりながら尚も壁に向かって押し込まれているのが分かったが、明らかにさっきよりも減速している。運が良ければ壁との間に挟まれなかった一人は助かるかもしれない。
だとしたらさ、助かるべきはオレじゃないよな。
「なあ、ツバサおれはさ・・・・・・」
この声、優しくて温かい。そうかアレックスが受け止めてくれたのか。もういいんだアレックス、君が助かる様にオレを衝撃を拡散するクッションとして使ってくれ。生き残るべきは、敵を前にして震えているオレじゃない。そうだよ、生き残るべきは勇者であるお前なんだよ。
「ーー勇者ってやつになりたかったんだ」
「・・・・・・え?」
勢いよく転がり過ぎて最早、上下の感覚すらなくなっている。狙って自分の身体を壁側にすることができない。相当、吹き飛ばされたはずだから、もう壁はそこまで来ているのだろう。
そして間もなくしてオレとアレックスは壁に打ち付けられる。その最後の瞬間にアレックスは耳元で確かに「このパーティーにはいーー」 と言った。
「あなたのその表情・・・・・・堪りませんねぇ」
ティケルヘリアは歪んだ口元を手で隠しながら、とろけた瞳で、恐怖で震えるオレのことをじっとりと見つめていた。
「あら、あなた良かったじゃない。ティックに気に入ってもらえて」
「い、いやだ、やめろ・・・・・・」
どんどん近づいてくるティケルヘリア。上気した息遣いすらも聞こえてくる。脳裏には、前回の記憶が蘇り首筋が熱を帯びていくように感じ、それに反して体中の血液は冷めていく。
「やだ、死にたくない・・・もう、死ぬのは嫌だ」
オレの身体はガタガタと震えだしていた。腰を固定している腕を振りほどこうと全力で暴れても抜け出すことができない。そうこうしている間にもティケルヘリアはゆっくりと目の前に迫ってきている。死そのものが近づいてきている。
ティケルヘリアの冷たい手が頬に触れ、発狂しそうになった時、遠くに聞こえていた長い詠唱が終わった。
「二人とも遅くなってゴメンなさい。よくやったわ「ダークプロージョン」!!」
ミネルヴァお姉さまの大魔法が大気を震わせていく。ティケルヘリアとノブレスの間に小さな小さな虚無が発生した。
「なんだこれは・・・・・・吾輩の腕が!!飲み込まれる」
光も重力も全てを飲み込む虚無は、瞬く間に周りのありとあらゆる物を飲み込みながら成長していく。オレの頬に手をかけ伸ばしたティケルヘリアの腕は、虚無の発生地点に近かった為に何よりも先に吸い込まれていく。
「これほどの魔法を人間が生み出すなんて・・・・・・・仕方ない」
オレを拘束していた腕が解かれる。背中から飛び出したノブレス、広がり続ける虚無
を両手で包み込むと詠唱を始めた。ティケルヘリアは吸い込まれる腕を肩から引き裂いて、ミネルヴァお姉さまへと向かっていった。
放り出されたオレは、まだ血の気の戻らないまま這いずりながら少しでも遠くへと逃げようとしていた。カーペットにオレがはい回る不格好な跡が道のように残されていく。
「舐めんじゃないわよ、人間!!!」
ノブレスが虚無を打ち破った瞬間、それまでに吸い込んだ、光も音も物質も、大気やあらゆる質量さえもを一気に吐き出した。その衝撃波は凄まじくオレの身体は一瞬にして飛ばされてしまった。
「こんな勢いで飛ばされたら・・・・・・壁に叩きつけられて圧死する」
死の初体験は斬首で、今度は圧死か。世界樹の弓も吹き飛ばされてしまって、何かスキルを使って減速することもできない。成すすべなく壁に叩きつけられるしかないのだと思った時、「ツバサ!!」 と声が聞こえた。
誰かが吹き飛ばされるオレの身体を受け止めた。その衝撃で肺が潰れたのだろう、激痛と共に吐血する。誰かを巻き込んで、転がりながら尚も壁に向かって押し込まれているのが分かったが、明らかにさっきよりも減速している。運が良ければ壁との間に挟まれなかった一人は助かるかもしれない。
だとしたらさ、助かるべきはオレじゃないよな。
「なあ、ツバサおれはさ・・・・・・」
この声、優しくて温かい。そうかアレックスが受け止めてくれたのか。もういいんだアレックス、君が助かる様にオレを衝撃を拡散するクッションとして使ってくれ。生き残るべきは、敵を前にして震えているオレじゃない。そうだよ、生き残るべきは勇者であるお前なんだよ。
「ーー勇者ってやつになりたかったんだ」
「・・・・・・え?」
勢いよく転がり過ぎて最早、上下の感覚すらなくなっている。狙って自分の身体を壁側にすることができない。相当、吹き飛ばされたはずだから、もう壁はそこまで来ているのだろう。
そして間もなくしてオレとアレックスは壁に打ち付けられる。その最後の瞬間にアレックスは耳元で確かに「このパーティーにはいーー」 と言った。