あかいろのしずく

「ど、したんだろう、私......」



開いた唇が震えて、上手く言葉が喋れない。

優しい言葉で泣いてしまうなんて、なんて単純なんだろう、私は。




男性は椅子から立ち上がり、用箋ばさみを置くと、私の隣に座って背中を撫でてくれた。


なんだ、これ。なんなんだろう。
布団にくるまって、彼にも優しくされて。すごく、あったかいはずなのに。





「どうして私だったんですか......? どうして私だけ......っ」




溢れ出る悲しみや憎しみが、それを打ち消して冷たく変えていく。

そうだ。そうだよ。
思えばあの時、私があの教室にいたのは、他の生徒みたいに偶然でも不運でもない。


全てはあの......――――。
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