あかいろのしずく
ないと不便、っていうか。
周りを見てなんとなく、自分が遅れていることに気づいたからかな。欲しいなあ、とぼんやり思った時期があった。
それをユズキに言うと、『そっかあ』と考え込むような仕草をした。それからユズキはこんなことを言った。
『私ね、携帯をもらったのは良かったんだけど、制限がかけられてたんだよね。夜は目に悪いから八時からは触れなかった』
『え! そうなんだ』
『うん。でも、最初は反対したんだ。携帯使うのって大体夜じゃん? 学校から帰ってきたら夕方になってるし。ほら、友達から連絡来てたりするのも夜でしょ?』
『うん。言われてみればそうかも』
夜なのか? 私はよく分からなかったけど頷いて見せた。
『というわけで、持ってても半分使ってないみたいなものだったんだよね』