あかいろのしずく


それを聞くまで、私はユズキが羨ましかった。

でも、持っていなかったのと同じようなものなら、私は持たなくて良かったのかもしれない。なんだかんだで視力は落ちていないし。


それからユズキは、ポツリと落とすように呟いた。






『分かんないよね、どっちが辛いかなんて』


『え?』


『目の前にあるのに触れないのと、最初から持っていなくて触れない。私とナナカ、どっちが辛かったんだろう?』





真剣に答えようとしたけど、私は答えが出せなかった。

ユズキの言う通りなんだ。私の「辛さ」とユズキの「辛さ」は違う。



そもそもそこまで欲しくなかったこともあったし、私はその時、咄嗟に「ユズキの方が辛いんじゃないかな」と言ったけれど。
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