あかいろのしずく

「吹奏楽部です。その日は屋上で練習することになっていました」

「屋上......」



なんとなく嫌な予感がしながらその単語を反芻すると、サキが「けど」と言って一度、言葉を詰まらせる。

祈るように両手で合わせて膝の上に置いていたサキの手が、少し震えているのが暗い中でも分かった。





「いきなりです。先輩が、練習をやめて目の前で飛び降りました」






嫌な予感は当たり、アズマははーっと息を吐いて俯いた。




「それを直で見たせいか、少しパニックになってしまって。どこに行っても同じようなものを見そうで怖かったんです。家からも出られなかった」




まあ、人が死ぬところを見るなんて初めてでしたからね。
サキは笑っていた。私もアズマも、何も言えなかった。
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