あかいろのしずく
俺は部屋の中央にいた。西平もあの火の壁をくぐり抜けてこちらに来た。服のあちこちに小さな炎がついていた。俺は思わず後ずさる。
ドアが使えない。リビング、ダイニングの中央に共に火が放たれ、もう逃げ場もない。もともと窓は鍵が壊されているから開かない。これも使えない。
さっきの状況とは打って変わって立ち込める凄まじい熱気。俺はとりあえず煙を吸わないように、かがんで西平を見上げた。
西平は俺を見降ろして言い放つ。
「残念でしたね、気づくのが遅かった」
「最初からこうするつもりだったのか?」
「死ぬ前に話を聞いてほしいと言ったのはアズマくんですよ。もう話は終わったのでしょう? じゃあ死ぬしかないじゃないですか」
結局本当の意味での時間稼ぎになったのか。