あかいろのしずく
子供たちは僕に向かって何か言っていました。でも何を言っているのかは聞こえませんでした。可哀そうだけど、でも、今はそんなことを気にしている場合ではないのです。


そして、花畑の上を駆けて小さな森を抜けて、次に光の指す明るい場所に飛び出した時でした。




――



勢いよく何かにぶつかり、僕はその反動で後ろに倒れます。
悲鳴がして、僕はしまった、と慌てて前を見ました。彼女もまた僕と同じように、後ろに倒れていました。

そこにいたのは......。



「ちょっと、気を付けてくださいよ。ここは走っちゃ駄目ですよ」



ふんわりとした茶色の髪が、胸元でさらりと揺れます。頭には花の冠をつけていて、白いワンピースを着ていました。


僕を怪訝そうな目で見ている彼女は、全く知らない女性でした。
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