あかいろのしずく

子供たちが僕に追いついたころには、女性はもういなくなっていました。僕はその場所に呆然と立ち尽くしていました。


「おじさん足速い!」

「ちょっと待ってくれてもいいじゃん!」



ぶーぶーと文句を言う子供たちを見下ろして、僕は力なく笑いました。



それから二人と話しながら、花畑を歩きました。
もともと僕を連れていくことになっていたのに、僕がいきなり走り出したから、また来た道を戻ることになりました。


女の子も男の子も、僕はよく生前に話した事がありました。

けど、本当に、二人は僕のことを何も覚えていませんでした。それどころか、天国のことばかりで、生前のことなんて全く話さないのです。
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