あかいろのしずく
言葉を失っている僕に、純が笑いかけました。
「結婚式の式場!」
式、場?
結婚式の......?
僕は全く理解できませんでした。どうしてこれから地獄に行く僕が、こんな式場なんかにいるんだ?
ついさっき女性に言われたことを思い出して、余計に訳が分からなくなりました。
もしかして、他の人の式を見るということなのでしょうか。でも、一体どうしてそんなことをするのでしょう。僕は、一握りの可能性を感じながらも、それを信じようとは思えませんでした。
いや、違うか。
信じたく、なかったんだ。
「どう? “地獄に行く”ぐらいびっくりしたでしょ!?」
純はそう言って「へへ」と笑うと、僕の方にもたれて体を預けました。
「なにを、言ってるんですか」
「ん? これから結婚式が始まるんじゃない」
「誰の?」
純が当然と言った風に答えました。僕は絶句しました。