あかいろのしずく

言葉を失っている僕に、純が笑いかけました。


「結婚式の式場!」



式、場?

結婚式の......?



僕は全く理解できませんでした。どうしてこれから地獄に行く僕が、こんな式場なんかにいるんだ? 

ついさっき女性に言われたことを思い出して、余計に訳が分からなくなりました。


もしかして、他の人の式を見るということなのでしょうか。でも、一体どうしてそんなことをするのでしょう。僕は、一握りの可能性を感じながらも、それを信じようとは思えませんでした。


いや、違うか。
信じたく、なかったんだ。


「どう? “地獄に行く”ぐらいびっくりしたでしょ!?」



純はそう言って「へへ」と笑うと、僕の方にもたれて体を預けました。



「なにを、言ってるんですか」

「ん? これから結婚式が始まるんじゃない」

「誰の?」



純が当然と言った風に答えました。僕は絶句しました。
< 731 / 754 >

この作品をシェア

pagetop