あかいろのしずく

僕は先ほども彼女と会いました。あの、頭に花の冠をつけた女性でした。


「あなたは......」



女性が僕に気づいても、僕は気づかないフリをして通り過ぎようとしました。
けど、次の瞬間、予想もしていなかったことを女性が口にしました。



「あれ。ちょっと待って。ここにいるってことは、もしかしてあの子と結婚するのって、あなただったんですか!?」



は......?


心がぐらりと大きく揺れました。結婚。結婚、結婚、結婚って、なんでみんな口を揃えて同じことを言うんだ。それにこの人がどうして知っているんだ?

純のことも僕のことも。
まさか、純のように僕のことを全て知っているのか?

行き着いた答えに恐怖しました。顔から血の気が引きました。
こんなところ、もういたくない。僕は俯いて歯を食いしばります。
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