あかいろのしずく
通り過ぎようとしたら、案の定、女性に腕を掴まれ引き留められました。
「待ってください。どうして無視するんですか」
「すみません、急いでるので」
「せっかく会えたのに話さないんですか? あの子、そこで待ってますよ。それともなにかあったとか」
「なにもないですよ」
鬱陶しくなってきました。
呆れてため息をつきます。もう話すことはないでしょう。どうせこの人も純も......。
「逃げるんですか?」
女性は唐突にそう言いました。
その時ぷつんと、僕の中で何かが切れたような音が響き渡りました。そうして僕は、またさっきのように女性を睨みつけました。
逃げるんじゃないんだよ、うるさいな。
どうせ純もあんたも、心の中では、僕に幻滅しているくせに。
「あなたには関係ないでしょう!? 僕に用がないなら構わないでくださ」
僕が掴まれた腕を大きく振って、女性の手を振りほどいた――瞬間、女性の声が僕を遮りました。
「じゃあ私が話します!」