あかいろのしずく

わがままが許せなかったはずです。自分勝手だったのが嫌だったはずです。でも、それは、本気にするほどのことじゃなかった。

純を怒鳴りつける必要なんて、なかった。



「死ぬのは怖かったでしょう? 痛かったでしょう。こちらこそですよ、僕に君たちを助ける手伝いをさせてくれて、ありがとう」



子供達は泣いていました。「おじさん優しいね」男の子がそう言ったので、僕は
笑いました。もうおじさんでいいか、そう思いました。

緑が香ります。さあ、と辺りに静かな風が吹きました。



「先生」



胡桃色の髪が揺れます。僕はもう、彼女が何を言おうとしているのか、分かっていました。さっきとは打って変わって、女性は落ち着いた口調で、伏し目がちに言いました。



「ごめんなさいね、私も。あなたのカウンセリングを受けた一人でした」

「はい」



そうです。白髪の女性も、男の子も女の子も、この女性も、全員が、僕がカウンセリングを担当していなくなってしまったひと達でした。
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