あかいろのしずく

自分の弱みをさらけ出すことが如何に難しいか、分かるでしょう。
話して後悔したことが、あるでしょう。僕にもある。

人の悩みを聞いてアドバイスをして喜ばれるようなこともあれば、陰で呪われるような仕事です。

こんな相談で人生が変わるわけがなかった。
どうせこいつに自分の気持ちなんか分からない。
話したのが無駄だった。

感謝する一方で生まれるそんな気持ちがあることは、十分承知でした。


そうですよ。所詮悩みを聞こうが弱みを握ろうが、完璧なアドバイスができるわけでも簡単に救えるわけでもない。できるならそんなカウンセラーになりたかった。

けど、だからこそ、僕は僕の結果に期待はしていませんでした。それに対する批判は当然だと思っていました。

四人も担当した人が死んでしまって、純までいなくなって。
もうこんなの、恨まれる以外他に何もないと思っていました。


それなのに。
< 743 / 754 >

この作品をシェア

pagetop