広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
「あ、ごめん。多分大丈夫ー。今のは言葉のあやっていうか……」
「多分!?大丈夫なのは多分なの!?」
「えー、うーん。どうだろうー……」
「フォローなしかよ!」

そんなやりとりを繰り返すうち、長森くんがプッと吹き出した。

「ははは!」
「長森くん?」
「なんかいい意味で気が抜けたわ。ありがと、日下部さん」
「えーと……どういたしまして……?」

長森くんが椅子から立ち上がる。

「んじゃ、俺そろそろバイトだから先行くな。広瀬、日下部さん、バイバイ」
「ば、バイバイー」
「今日のこと、できればいい感じにヨロシクー!」

言いたいだけ言って、長森くんは去っていく。
なんだか嵐のような勢いのよさだ。
残された私たちは顔を見合せ、広瀬くんがすまなさそうに微笑んだ。

「なんだかごめん日下部さん。長森のやつ、強引で……」
「ううん、楽しかった。今まであんまり話したことなかったけど、長森くん面白いねー」
「あはは。日下部さんとは意外に合うのかもね………」
「広瀬くん?」

急に黙った広瀬くんの顔を覗きこむ。
「ごめん、何でもないよ」と笑顔で返された。

「小泉さんとのことだけど、本当無理しなくていいからね。小泉さんと日下部さんの気持ち優先でね」
「う、うん……」
「でも僕は長森がずっと小泉さんのこと好きだったの知ってるから、応援したいと思ってたりするんだ。……あいつ、いいやつだしね」
「そっかー」
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