仮想現実の世界から理想の女が現れた時

担当の岩崎部長は、顎に手を当てて思案する仕草を見せた。

「あの、もし私でよければ作りましょうか？」

「えっ？」

岩崎さんは、総務部長さんだ。
作るってどういうことだろう。

「私は、今はもう現場を退いてますが、創業
当時は、社長とともにジュエリーデザイナー
兼職人でしたから、私でよければ
佐久間さんの大切な指輪、作らせていただき
ますよ？
私なら、他のお客様を受け持っているわけ
ではありませんから、20日までにお作りする
ことも可能です。
いかがですか？」

それは願ってもないことだけど…

「お忙しいのに、ご迷惑ではありませんか？」

「大丈夫ですよ。
むしろ、久しぶりに私も作品を
作りたいんです。
今日はこの後、お時間はありますか？
デザインだけでも起こしたいんですが… 」

俺は、田原に口止めをして先に帰らせ、デザインの相談に乗ってもらう。