仮想現実の世界から理想の女が現れた時
俺は、半ば瀬名を引きずるようにして、お化け屋敷に連れて行く。

瀬名が入り口で尻込みしているので、

「ほら、行くぞ。」

と俺は、瀬名の肩を抱いて無理矢理、中に入った。

「部長、置いてかないでくださいね。」

瀬名が震える声で言う。

「くくっ
怖いなら、しがみついてるんだな。」

全く、たかがお化け屋敷がそんなに怖いのか?

怯える瀬名は、想定以上にかわいい。

「ぎゃっ!」

「ひぃ〜!」

瀬名は本気の悲鳴をあげながら、俺の腰にしがみついて、歩いた。

途中、瀬名は何度も膝から崩れ落ちそうになったので、俺はその度に、肩を抱いて立たせてやった。

瀬名はお化け屋敷を抜けると、冷や汗をびっしょりとかいて、立っているのもやっとという様相だ。

「もう、絶対に行かない。」

瀬名はひとりで宣言する。

「ははっ」

なんだ、それ。

思わず、笑みがこぼれた。

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